自賠責保険とは

2018年7月13日

自動車保険には自賠責保険と任意保険があることをご存知の方は多いと思います。では、自賠責保険はどのようなことを目的として作られており、どのような特徴を持っているのでしょうか?また補償されるケースとされないケースを決める補償範囲、賠償金として支払われる補償額はどのように決められているのかを解説しています。

自賠責保険の概要

自賠責保険の正式名称は「自動車損害賠償責任保険」と言い、1955年に制定された「自動車損害賠償保障法」という法律で加入が義務付けられているものです。自動車やバイクの所有者および運転手が必ず入らなければいけないので、別名「強制保険」とも呼ばれます。

自賠責保険には損害保険会社が取り扱っているものと、JAや労災などの共済組合が取り扱う「自賠責共済」がありますが、中身は同じものとなっておりどちらかに加入していれば問題ありません。

自賠責保険の特徴

自賠責保険の大きな特徴は、被害者救済を目的として運営されているというものです。つまり、被害者が加害者に損害金を請求するのではなく、加害者が加入している自賠責保険の取り扱い損害保険会社や共済組合に直接請求することができます。

また対物への補償はなく、対人賠償のみに限られているのも特徴の1つです。例えば相手の車を壊したり、自分自身がケガをした場合などは補償の範囲外となっているので保険金は支払われません。

保険金の支払い限度額は1件あたりの事故ではなく1人あたりに適用されるので、1件の交通事故で被害者2人が死亡した場合は1人あたり4000万円、合計で8000万円の保険金が補償されることになります。

急ブレーキをする車

加入証明書とステッカー

自賠責保険に加入すると取り扱っている損害保険会社や共済組合から「加入証明書」と自賠責保険の満了期間を記したステッカーが交付されます。加入証明書は運転中の携帯が義務付けられており、不携帯で運転すると30万円以下の罰金に処せられることになります。

ステッカーの正式名称は「保険証票」と言い、自動車はフロントガラスに、原付などのオートバイや検査対象外の軽自動車はナンバープレートにステッカーを貼なければ公道を走ることはできません。

自賠責保険の補償内容と限度額

自賠責保険では他人をケガさせたり死亡させた場合に限って補償されます。他人のモノや加害者本人のケガや死亡には保険が適用されません。また補償限度額は内容によって異なりますが、限度額を超えた損倍賠償については自分の力で支払わなければなりません。

内容 補償限度額 補償内容
死亡 3000万円 慰謝料、逸失利益、葬儀費用
死亡にいたる
までのケガ
120万円 慰謝料、治療費、休業補償、文書料
後遺障害 4000万円(※) 逸失利益、慰謝料
ケガ 120万円 慰謝料、治療費、休業補償、文書料

※障害の程度による(1級4,000万円~14級75万円)

なお自賠責保険の補償限度額は1人あたりとして計算されます。例えば2人をケガさせて場合は1人あたり120万円、合計で最大240万円の補償額が支払われることになります。

加害者が2人いるケースではそれぞれに対して1人あたりの補償額が計算されます。例えば自動車Aが被害者Cをはね、その後自動車Bが被害者Cをさらにはねて死亡させたケースだと、自動車Aを運転していた加害者A’から3000万円、自動車Bを運転していた加害者B’からも3000万円、合計で最大6000万円の補償額を受け取ることができます。

自賠責保険の補償範囲

自賠責保険の補償範囲は対人でかつ「他人」に対するものと定めらています。自賠責保険の他人とは「運転者と運行供用者」以外の人のことを指します。運転者とは車を運転している人のことで、運行供用者とは一般的に車の所有者のことです。

例えば会社員Dが所属する会社社長Eが所有する車を運転し、会社社長Eをひいて死亡させたケースを考えてみましょう。このケースでは会社員Dが「運転者」となり、会社社長Eは「運行供用者」となります。この場合だと運行供用者である会社社長Eは自賠責保険の補償範囲外となるので、死亡による補償額を受け取ることができません。

また加害者に過失がないケースや運行中ではない事故も自賠責保険の補償範囲外となります。例えば、赤信号で停車している車に自転車がぶつかり自転車を運転していたFが死亡したケース、駐車場に停めていた車に子どもGが激突しケガをしたケースなどは補償範囲外となります。

このように自賠責保険は限られた内容と範囲しかカバーしていないので、任意保険に加入する必要性が高まるというわけです。

自賠責保険の支払い基準

事故によるケガで病院に通院したりする場合には、加害者の自賠責保険から入院費や治療費が支払われることになります。限度額はケガの場合は120万となっていますが、ケガや治療内容などによって計算方法が定められています。

またケガなどにより会社へ行けなくなり収入が無くなった場合にも、休業補償という名目で慰謝料が充てられることになります。

費目 内容 支払い基準
治療費 応急手当費、診察料、入院料、投薬料、手術費など 必要かつ妥当な額
看護費 入院中の看護料
自宅看護、通院看護
1日につき4100円
1日につき2050円
通院交通費 通院に要した交通費 必要かつ妥当な額
諸雑費 入院中の諸雑費 入院1日あたり1100円
義肢などの費用 義肢、歯科補鉄、義眼、メガネ、補聴器、松葉杖などの費用 医師が認めた必要かつ妥当な実費
診断書などの費用 診断書、診療報酬明細書などの発行費用 必要かつ妥当な額
文書料 交通事故証明書、印鑑証明書などの費用 あり
治療費 応急手当費 必要かつ妥当な額
休業損害 事故による傷害のために発生した収入の減少 1日5700円~19000円
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 入院1日につき4200円

費目をすべて合計して120万円で収まるのであれば自賠責保険から全額支払われることになりますが、超過した金額については相手に請求することになります。任意保険に加入している場合は任意保険を適用して支払われることがありますが、相手が任意保険に加入していなかったり、補償対象から外れているケースなどでは直接相手に請求することになります。

120万円を超過した分に関しては任意保険の支払い基準で慰謝料が計算されることになります。

自賠責基準、任意基準、裁判基準の違い

自賠責保険による補償では自賠責基準によって慰謝料が計算されますが、超過した分に関しては大きく分けて任意基準と裁判基準によって計算されることになります。

任意基準とは損害保険会社によって作成された慰謝料計算方法です。補償額は保険会社によって異なり、また事故のケースバイケースによって算出される方法があいまいになることも多いようです。補償額は自賠責基準よりも多く、裁判基準よりも少なくなっています。

裁判基準で慰謝料を計算するためには弁護士を雇って裁判を起こす必要があります。弁護士を雇うことによって実際に裁判には至らず、保険会社との交渉の過程で示談になるケースも多いようです。この場合に想定する基準は裁判基準となるので、自賠責基準で交渉するより高い慰謝料を受け取れる可能性があります。

後遺障害(級) 自賠責基準 任意基準 裁判基準
1級 1100万円 1050~1700万円 2800万円
5級 599万円 580~900万円 1440万円
10級 187万円 184~260万円 530万円
14級 32万円 32~45万円 110万円

自賠責保険の過失割合による減額

自賠責保険は被害者を保護するという目的で作られているという点で、重大な過失がない限り補償額が減額されることはありません。ただし重大な過失が被害者にあると認められた場合は、過失割合に応じて補償額が減額されることになります。

過失割合は過去の交通事故の裁判の判例を元にして、一定の認定基準が設けられています。例えば、横断歩道を点滅信号(黄色)で渡っている歩行者と青信号の交差点を左折した自動車の事故の過失割合は、歩行者30%:自動車70%となっています。この場合の被害者が歩行者の場合は全額が、自動車の運転手が死亡した場合は20%の減額となります。

被害者の過失割合 減額割合
死亡または後遺障害 ケガ
70%未満 減額なし 減額なし
70%以上 ~ 80%未満 2割減額 2割減額
80%以上 ~ 90%未満 3割減額 2割減額
90%以上 ~ 100%未満 5割減額 2割減額

自賠責保険が適用されないケース

注意して上の表を見ていただきたいのですが、被害者の過失割合が100%の場合は自賠責保険から保険金を受け取ることはできません。これは自動車損害賠償保障法(自賠法)3条但し書きにも、自賠責保険が免責とされることが明記されています。

また、被害者が既往症などの病気を患っており、交通事故によって死亡または後遺障害が発生したのか、病気によって死亡または後遺障害が発生したのか原因が不明な場合は、自賠責保険の賠償額は5割の減額となります。

なお傷害による損害額が減額により20万円以下となる場合は補償額は20万円となります。このように自賠責保険は一概に満額を受け取ることができるわけではないので、交通事故のケースによって減額割合や適用・不適用が決定されます。

自賠責保険のまとめ

  • 自賠責保険は法律で加入が義務付けられている
  • 補償対象は対人のみで、1人あたりの補償額と補償内容が決められている
  • 加入証明書は携帯義務、ステッカーは所定の場所に貼ること
  • 自賠責保険の慰謝料の計算は、自賠責基準<任意基準<裁判基準の順に高くなる
  • 被害者に100%の過失がある場合、自賠責保険は適用されない
  • 過失割合は過去の判例に基づく認定基準によって決められる